なつかしくて新しい。富岡銘菓「まゆこもり」
富岡製糸場とともに、繭に馳せる想いをのせて
銘菓「まゆこもり」は特に精製された葛粉を原料として作り上げております。
葛粉は江戸時代から当地域の珍しい食品であったと思われ、富岡七日市藩の七代藩主前田大和守利和(やまとのかみとしよし)公より十一代将軍徳川家斉(いえなり)公へ献上されていました。
天保四年(1833)の七日市藩の「公用日記」には次のように記されています。
「例年、笋(たけのこ)を献上していましたが、近年は笋が不作となってしまいましたので、代わって今後在所の珍しい葛粉を献上品としたいのでご許可ください」この七日市藩側の伺いに対して、「伺いの通り葛粉献上あるべし」という返答がありました。
それ以後、七日市藩は葛粉を献上品としたようです。
献上品は特別の原料を精製し、厳しい吟味を重ねるという慣例がありました。
このように七日市藩領からわざわざ採取された葛粉が徳川将軍の食品として江戸城まで運ばれていた事実があり、葛粉は当地にとって大変由緒ある品物であったと言えます。
さて明治五年、江戸時代からの養蚕地帯であった富岡町にフランス人の指導のもとに官営富岡製糸場が設立され、わが国の製糸業の近代化を推し進めて来たことは周知の事実です。また一方、明治十三年に組合製糸の甘楽社が設立され、生産した生糸は米国に輸出され養蚕農家に大きな利益を与えていました。このように繭はわがまち富岡のかけがいのない産物でした。
これらに因んで作りあげたものが「まゆこもり」です。献上品と同様に原料を厳しく吟味しておりますので、富岡の一大産品であった繭に想いを馳せながら、絹のようにしっとりした味わいのある葛湯を存分にご賞味下さいませ。
亭主敬白
和歌の説明
母が飼っている蚕がまゆにとじこもるように
母に守られ家にとじこもって人に逢わない
貴女(あなた)に逢うてだてが欲しいものです。
万葉集巻十一より